御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
するとその時――
「俺も時々、そう思うよ」
観葉植物の向こうから、男性の声がした。
「えっ?」
驚いてソファーから腰を浮かせると、ちょうど早穂子の対角線上に、紺色のスーツを着た男性が見えた。
片手にスマホを持っていた彼は、目を丸くしている早穂子に向かって、にっこりと微笑む。
「――副社長」
そう、山邑始だった。
始がそこにひとりで座っていた。
なぜ?と頭がパニックになるが、手にスマホを持っているので、もしかしたら誰かと電話していたのかもしれない。
「すみません、お邪魔しました」
早穂子は慌ててバッグを持ち上げ、その場から立ち去ろうと立ち上がったのだが――
「あ、いいよ。電話はもう終わってるから」
始が腰を浮かしかけたので、余計慌ててしまった。
早穂子は持っていたバッグの中身を、そのまま床にぶちまけてしまった。
「あっ……」
慌てて床にしゃがみこみ、バッグの中身をかき集める。