御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
(恥ずかしい……!)
憧れの始の前で、とんだ失態だ。
頬にどんどん熱が集まって、恥ずかしくてたまらない。
(もうやだ~!)
焦りながらあれこれつかんでバッグの中に押し込んでいると、
「待って、ゆっくり拾おう」
なんと始が早穂子の前にひざまずいて、ポーチを拾っていた。
「すっ、す、すみませんっ……!」
「いいから。そんな泣きそうな顔しないで」
始はにっこり笑って、それから拾ったものを早穂子に手渡していく。
「すみません……」
バッグの中に、手渡されたものを一つずつ、きちんと仕舞った。
「――これって睡眠導入剤?」
落とした瞬間、ポーチから零れ落ちてしまったらしい。
病院でもらっている睡眠導入剤のシートを、始が拾い上げた。
「――はい」
一瞬ドキッとしたが、早穂子は入社試験を受け、面接まで進んだ時に自分の不眠症についてきちんと説明している。
だから面接をした始は知っている話だ。
隠すことに意味はないので、うなずいた。