御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「もちろんだよ、そこは鶴田くんにもちゃんと言っておくから! っていうか、鶴田くんのおせっかいって気もするし」
「うん、きっとそうだと思うよ。実際、鳥飼さんからは連絡ないわけだし」
早穂子は笑ってうなずいた。
「じゃあ鶴田くんにオッケーって言う!」
ゆずは目をキラキラと輝かせながら、バッグに飛びついてスマホを取り出した。
「まだラインして大丈夫かな~……」
と言いながら、目にもとまらぬ速さでフリック入力を始める。
「既読がついた!」
ゆずが椅子の上でぴょんと跳ねて、それから「あっ!」と声をあげる。
「【いつにする?】って! やった!」
「よかったね」
こうやって、ころころと表情を変える笑顔のゆずを見ていると、こっちまで元気が貰える。
恋は楽しいことばかりじゃないとよく言われるし、実際そうだと早穂子も思う。
だが恋以外に、人生においてこんなに胸を弾ませる、ときめきがあるだろうか。
ふと、始の顔を思い出す。
(始さんは……今まで誰かに本気で恋したこと、あるのかな)