御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
身も心も満たされるとはこういうことを言うのだろう。
(好き……始さん、好き……大好き)
そうやってしばらくの間、彼の腕の中で甘やかな気分に浸っていると、
「先週は本当にごめんね」
始が少しかすれた声で、早穂子の髪を撫でながらささやいた。
(先週……)
脳裏に涼音と待ち合わせていた始の姿が浮かんだ。
一瞬で甘い気分が吹っ飛び、頬がひきつる。
始の肩口に手をあて、その上に自分の頬を乗せている早穂子から、始の表情は見えない。
同じように、彼からも自分がどんな顔をしているかはわからないだろう。
もし彼に後ろめたいことがあるなら、社内でわざわざ涼音に会うことはしないはずだ。
だからあれは百パーセント、仕事だった。
頭ではわかっているが、胸がざわめく。
心が納得していない。
(涼音さんは、始さんのことを好きだから……)
今はまだいい。けれど涼音が本気で始を自分のものにしようとしたら、どうなるか。
始は長い付き合いの涼音を取るのではないだろうか。
そう思うと、胸がキリキリと痛くなる。
いつまで始の側にいられるのだろう。