御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「まだ眠れないの?」
「――はい。あまり……」
「そうか……」
始は少し考え込むようにあご先を撫でている。
今ところ職場に迷惑をかけたつもりはないが、自分という存在がいつ大きな「リスク」になるかはわからない。
いや、そもそも失敗するかもしれない時点で十分に「リスク」ではあるはずだ。
(もしかして……採用して失敗したって思われてるのかな……)
そう思うと悲しくて、いたたまれない気分になる。
自分から、辞めると言ったほうがいいのだろうか。
(でも、辞めたくない……。辞めたくない……)
そうやって、泣きたい気分を必死で抑えていると、
「昼間辛くなったら、ちゃんとやすんでる?」
「え?」
始の思いがけない問いかけに、早穂子は目を丸くした。
「うちはリフレッシュルームもあるし、バンバン使っていいって通知してると思うけど……使ってる?」
そう、山邑リゾートの本社にはフロアをまるごと一つ使った立派なリフレッシュルームがあり、エステ、整骨院、マッサージ、美容室、さらに仮眠室まであって、どれも技術料を考えればタダ同然の格安料金で利用できる。だから昼休みともなれば、社員でにぎわっているのだ。