御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
ほんの十分程度の短い逢瀬を終え、「ごめんね」と謝りながらミーティングルームを出ていく始の背中を見送った。
(本当に忙しい人だな……)
始が仕事を理由にして振られるというのは、まるっきり嘘ではないのだろう。
でもそれは、あくまでも表向きの理由だと早穂子は感じていた。
彼が今まで付き合った女性たち――涼音いわく、始が自分のテリトリー外で選んだ女性たちだって、馬鹿じゃない。
最初はよくてもそのうち気が付く。
始は誰でも平等に接する。誰にでも親切で優しい。
山邑リゾートの社員であれば、総務部長も、営業も、新入社員も、父親である社長にも、同じ態度をとる。
それはプライベートでも徹底されていて、彼の友人知人という枠の中に、『恋人』というラベルを貼った自分がいるだけ。
自分が彼にとってかけがえのない、唯一無二の存在ではないという事実に、打ちのめされてしまうのだ。
お姫様のように扱われて、大事にされているとわかっていても、彼の心が遠く感じる。