御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
どこか遠くを見ているような、始のその視線の先の正体が知りたくなる。
たとえどれほど傷つくことになっても――。
いや、傷つきたいのかもしれない。
打ちのめされて、叩きのめされて、そしてもう二度と彼のことを忘れられないくらい、始を自分の心に、刻み付けたいと思っているのかもしれない。
とんだやけっぱちだ。
「――戻らなきゃ」
早穂子はふうっと息を吐いて、ミーティングルームをあとにした。
総務部長のデスクに「戻りました」と告げると、「お疲れ様」とにっこりされた。
当然だが、始との関係をつゆとも疑っていない。
勤務時間中にいけないことをしてしまったという罪悪感がちょっぴり込み上げてきたが、そこはなんとか飲み込んだ。
決められた仕事を時間内にきちんと終わらせる。当たり前だが、それが今の自分に求められていることだ。
(よし、がんばるぞ!)
早穂子はキリッと表情を引き締め、またパソコンを立ち上げ仕事に取り掛かることにした。