御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「少し移動することになるけど、いいかな」と鳥飼が言うので、高円寺まで移動することになった。
勿論早穂子に異論はない。
わざわざ連れて行ってくれるくらいだから、きっといい店なのだろう。
「鳥飼さんのおすすめのお店?」
少しワクワクしながら問いかけると、
「そう。知り合いがやってる店なんだ」
鳥飼はそう言って、腕時計に目を落とす。
「まだ間に合うから。せっかくだし行こうかと思って。ごめんね、連れまわして」
「ううん、おいしいもの食べられるならどこにでも行きます」
わりと真面目に答えると、鳥飼がふふっと笑う。
「そう言ってもえたら俺も助かる」
三十分後、高円寺に到着し、駅から少し歩いて、商店街の中にある、黒猫の看板が掲げられた小さなビストロへと入った。
水色の扉を開けると、入店を知らせるベルがカラン、コロンと音を立てる。
エル字型のカウンター席と、テーブル席が三つのこじんまりとした店だが、ちょうど客がはけたところらしく、入り口に近いカウンター席に、老人がひとりピザを食べているだけで、あとは空席だった。