御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「きゃっ……」
思わず悲鳴をあげる早穂子だが。
「しーっ……声、出さないで……」
始の手が、早穂子の背中に回った。
顔が上等なスーツに押し付けられて、ものすごく焦ったが、始は両腕で早穂子を腕の中に閉じ込めるように抱きしめてしまった。
「山邑さん、どこいったんだろー!」
「ふくしゃちょー!」
「ハジメさーんっ!」
女子だけではない、野太い男子の声も混じっていた。
どうやら姿を消した始の姿を探して、社員があちこちを回っているらしい。
(もしかして見つかりたくないってこと……?)
早穂子の心臓は早鐘のように鼓動を刻み、口から飛び出しそうなくらいドキドキしていた。
広くたくましい胸。熱い体。
彼自身が熱を発するようなエネルギーがある。
だから包み込むように抱きしめられると、死ぬほどドキドキして苦しいはずなのに、同時に安心感のようなものが、沸き起こってくる。
(どうしよう……!)