御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
それからどれだけ時間が経っただろう。
ほんの数分の出来事だったかもしれないが、とても長い時間が過ぎたような気がした。
「始さん。あったかいお茶飲みませんか?」
「……うん」
こくりとうなずいたのを確認して、早穂子はベッドから降り、下着を身に着ける。
彼に見せたいと思って買ったはずのワンピースを雑に頭からかぶって、キッチンへと向かう。
どこかしぼんでしまったような始にバスローブを着せて、ふたりでベッドに腰かけお茶を飲んだ。
カモミールティーを少しずつ飲んでいると、だんだん胃のあたりがあたたかくなっていく。
早穂子はゆっくりお茶を飲みほし、テーブルに置くと、それからぼうっと手元のカップを眺めている始の顔を覗き込んだ。
「始さん」
「――ん?」
始はうつむいたまま、心ここにあらずと言った様子だ。
(そう、わかってる。私はこの面倒な人を愛している。たとえ報われなくても……愛してる。なによりも大事で……幸せになってほしい人)
ようやく早穂子の気持ちは固まった。