御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「蓮杖さん、大丈夫?」
「ん、大丈夫だよ」
カウンターで、何杯目かのグラスを空けた早穂子に、心配した様子で鳥飼が声をかける。
「せっかくのハレの日ですから、このくらい」
「まぁ、そうだけど。ほどほどにな」
鳥飼が軽く肩をすくめる。
「はーい。気を付けます」
鳥飼の助言にまじめぶってうなずきつつ、
「すみませーん、モスコミュールもう一杯ください」
カウンターにもたれ、早穂子はバーテンダーにお代わりを要求した。
いくら飲んだって、それほど酔わない。
酔いたければ酔うが、今はそういう気分ではないのだ。
(ゆずが大好きな鶴田さんと結婚したんだもん。ここ最近で一番楽しい気分だわ)
そうやって、楽しく早穂子がカウンターで飲んでいると、入れ代わり立ち代わり、男子がやってきて話しかけてくる。
ひとりだから、寂しそうだと思われてしまうのだろうか。
鶴田の知人、友人、先輩後輩だという彼らは、早穂子と軽く話をしたのち、さりげなさを装って連絡先を聞いてくる。