御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

三次会が終わり、女子はお開きということになった。
なんと男子たちはまだこの後飲むらしい。

BARの前で、ネクタイを外して少しラフになった鳥飼が、早穂子に近づいてきた。

「家まで送るよ」
「タクシーに乗るから大丈夫よ。鳥飼さんは新郎の面倒をみないと」
「ええ……やだな……」

あからさまにいやそうな顔をしたので、笑ってしまった。

鳥飼はくしゃくしゃと髪をかき混ぜた後、仕方ないなとため息をつく。

「じゃあタクシー拾うところまで送る。土曜の夜だ。酔っ払いも多いし」
「ありがとう」

相変らず鳥飼は紳士だ。早穂子は鳥飼と並んで、大通りへ向かった。


(もう今日はシャワーでいいかぁ……)

乗り込んだタクシーの窓から、外を眺める。

「お客さん、結婚式だったんですか?」
「ええ」

早穂子の足元には、引き出物の紙袋がある。

運転手と他愛もない会話をいくつかした後、ふわふわとあくびをしながらタクシーを降り、早穂子は自分の部屋へと向かった。

(ドレスは、明日クリーニングに持っていこう……)

こういったことは、来週でもいいかと思うと、ずるずると引き伸ばされてしまうものだ。

マンションの前で停めてもらい、支払いを済ませタクシーを降りたところで、段差につまづいてしまった。
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