御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「ギリシャはいい国だったよ。人も、環境も、俺によく合っていた。だから日々仕事に没頭して、同時に君に言われたことを考えながら……ひとりになって、俺はどういう人間なんだろうって、ずっと考えてた」
「わかり……ましたか?」
少し緊張しながら、早穂子は尋ねる。
「ああ。わかったよ。本当の俺は、めちゃくちゃ弱い、心底甘い、無神経なおぼっちゃんだったんだって」
始は自嘲するように言って、テーブルの上で祈るように指を絡ませた。
「そんな……」
自分が望んだのは、こんなことじゃない。
始に自分を大事にしてもらいたい一心で、離れたのだ。
人のことばかり考えず、始に笑って、生きていてほしかった。
早穂子は唇をわななかせて、叫んでいた。
「始さん、自分のことそんな風に言わないで……!」
だが、始は眉に力を込めて、首を振った。
「だけど、それが俺なんだよ!」
始が吐き捨てるように言い放つ。
見たことのない剣幕に、早穂子の唇から次の言葉が引っ込んでしまった。