御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「さ、まず食器から選ぼう」
そうやって、和食器、洋食器、ティーセット、そして料理をするための台所用品などを選んで、配送の手続きをする。
「山邑様、ラウンジでお待ちいただければ、商品を個別にお持ちして、選んでいただけるように準備いたしますが」
始が出した外商用のカードで、彼が誰だかすぐに把握したのだろう。
百貨店の女性店員が、少し慌てたようにカウンターで始に進言する。
だが始は笑って首を振った。
「あ、そういうの今日はいいよ。今、彼女とデート中だし」
「さようでございますか」
店員はふふっと微笑んでうなずいた。
特別待遇なんかしてもらわなくてもいい。
いずれ――始は自分の立場にふさわしい立ち居振る舞いをしなければならないのだろうけれど、今、自分たちはただの恋人同士だ。
「――早穂子、ごめん。電話だ」
そこでふと、始が胸元からスマホを出して、少し眉毛を下げる。
電話の相手は、おそらく出ないわけにはいかない、仕事関係なのだろう。
「わかりました」
「このあたりで待っててね、ごめん」
始は足早に売り場から離れて、フロアの端へと向かって行った。