御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
早穂子はこくりとうなずいて、何気なく和食器を手に取る。
普段よく使っている、波佐見焼の焼き物だ。
「これ、かわいい……」
「――それは、先週入荷したばかりの新作なんですよ」
「そうなんですね」
平皿を持ったまま振り返ると、そこになんと、黒のパンツスーツ姿の涼音が立っていた。
「あっ……」
「こんにちは」
彼女はにっこりと笑って、それから棒立ちになったままの早穂子が持った皿を、手に取った。
「どっ、どっ、どうしてここに?」
早穂子はおろおろしながら、問いかける。
彼女の顔を見るのも、かなり久しぶりだった。
「南天百貨店さんは、大事な取引先ですもの。まさかここで会えるなんてね」
涼音はそう言って、手にしたお皿を軽く持ち上げる。
「ねえ。これ、プレゼントさせてくれない?」
「え?」
「いつかの意地悪のお詫びよ」
「あ……」
彼女の言葉で、脳裏に過去の映像が走馬灯のように駆け巡った。