御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
そして始は早穂子の手をさりげなく繋ぎ、引き寄せた。
「きみはどういうのが好きなの?」
「あ、私はですね……」
早穂子は黒地のお皿の前へと向かいながら、繋がれた左手の熱に、心臓がバクバクだった。
(副社長の手、おっきい……私だって特別小さいわけじゃないのに、すっぽりだ)
自然と絡む指につい気を取られそうになるが、隣にいる始はなんとも思っていなさそうなので、反応しないように必死に顔を引き締める。
「ああ、こういうのが好きなんだ」
「はい。黒地だからいろんな料理に映えるし、白地よりも好きなんです」
オレンジ色の釉薬がかかった皿は、大小いろんな形がそろっている。
「そういえば今朝の卵焼き、これに乗ってた」
始が四角い皿を指さす。
「はい、これです」
嬉しくなってうなずく。
「玉子の黄色がよく映えていたもんね」
始はそう言って、少し懐かしそうにお皿を手に取った。