御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

(食器のことなんてたいていの人は興味ないと思うんだけど……嬉しいな)


自分の好きなものやこだわりを認めてもらうのはやっぱりうれしい。


始の横顔を眺めながら、早穂子がじんわりと喜びをかみしめていると、

「――山邑くん?」

背後から女性の声がした。


「あ、これはこれは。社長さんではないですか」


始が振り返りながら、にっこりと笑う。同時に繋がれていた手が離れていく。


(あ……)


離れていく手が急に寂しくなった。早穂子はぎゅっと自分で両手を握りしめながら、声を掛けてきた女性へと目を向けた。


年のころは三十前後だろうか。
麻のパンツスーツにしっとりとしたボブカットの黒髪が、非常に美しい女性だった。

ナチュラルなのだが、メイクもスーツも、指先から足先まで、どこからどこまでも洗練されている。


(すごい美人だ……)


背は少し低めだが、ピンと伸びた背筋が美しい。

立っているだけで自分とは種族が違って見えると、早穂子は見とれてしまった。


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