風薫る
俺は読む本を表紙で決める傾向がある。
それは木戸さんと貸し借りをするようになって、あまり自覚がなかったんだけど、顕著に現れていた。
借りる本はそれこそ最初はファンタジーで固めてあったけど、しばらくして俺の好みを掴んだ木戸さんは、選ぶのがとても上手かった。
渡される度に面白さは増していく一方で。
恋愛ものは淡いかなんて表紙じゃ分からないから、どうしても確実そうなものに偏る。
腰が引けがちな俺に、ある日見たらすぐに恋愛ものと分かる装丁の本を持ってきて、木戸さんは笑った。
『絶対大丈夫だから、黒瀬君にも読んで欲しいの』
面白さは保障するよ、とも付け足して、ふわり、また微笑んで。
半信半疑だったけど、借りてよかったと今は思っている。とても面白かった。
「ごめんね、毎回」
選ぶのに時間をかけてくれているのは知っている。
「お互い様だからね」
何でもないことのように流してくれた木戸さんに、選ぶのも楽しいよね、と尋ねられれば、もちろんと頷くしかない。
紛れもない事実だ。
それは木戸さんと貸し借りをするようになって、あまり自覚がなかったんだけど、顕著に現れていた。
借りる本はそれこそ最初はファンタジーで固めてあったけど、しばらくして俺の好みを掴んだ木戸さんは、選ぶのがとても上手かった。
渡される度に面白さは増していく一方で。
恋愛ものは淡いかなんて表紙じゃ分からないから、どうしても確実そうなものに偏る。
腰が引けがちな俺に、ある日見たらすぐに恋愛ものと分かる装丁の本を持ってきて、木戸さんは笑った。
『絶対大丈夫だから、黒瀬君にも読んで欲しいの』
面白さは保障するよ、とも付け足して、ふわり、また微笑んで。
半信半疑だったけど、借りてよかったと今は思っている。とても面白かった。
「ごめんね、毎回」
選ぶのに時間をかけてくれているのは知っている。
「お互い様だからね」
何でもないことのように流してくれた木戸さんに、選ぶのも楽しいよね、と尋ねられれば、もちろんと頷くしかない。
紛れもない事実だ。