ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
「これからも放送続けていくの?」
「どうかな。さすがに相談が一件もこなくなったらやめるかもしれないけど」
放送時間までの僅かな間、私たちは向かい合って昼食を食べていた。
詩月は基本的にご飯派なのに私がいつもメロンパンばかり食べているから、今日は試しに半分あげたら意外とハマってすぐに完食していた。
「……たとえ相談がこなくなっても必要とされてないなんて思わないでよね」
私わざと無愛想に言った。これはちょっと照れ隠し。
――『人の役に立つと自分の存在を確かめられるっていうか……必要とされるとなんか安心するじゃん?』
前に詩月が言った言葉がふと、頭をよぎったからだ。
「……羽柴っていいヤツだよな」
きっとこれは褒められたんだろうけど、なんか気に食わない。
「それって今までいいヤツに見えてなかったってこと?」
……ああ、またトゲがある言い方。すると詩月が私の目をまっすぐに見つめて首を横に振った。
「ううん。羽柴は最初から優しくていいヤツだよ」
詩月はそう言ったあと私の返事を待たずにマイクの前に移動した。……ズルいなあ。こんなのほとんど言い逃げじゃん。
『皆さんこんにちは。水曜日のなんでも相談コーナーの時間です』
詩月の声がスピーカーから流れた。
自分の悩みのほうが深刻だっていうのに人の相談に真剣に応えて不安を取り除いていく。
お人好しだね、本当に。
だから私は放っておけないよ。
人を支えられるほど安定した立場にいないはずなのにそれでも……きみを見てしまうのは何故だろう。