ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
俺は自分の家までの道を間違ってしまったのか、と一瞬目を反らそうとした。だけど庭先で燃えているエーデルワイスは間違いなく俺の家で。
それが逃げ場のない炎の檻のように黒煙を上げていた。
『世那待ってよ!私の告白の返事は……』
集まってきた近所の人たちに混ざって安田の声が聞こえた気がした。だけど気がしただけ。
ザワザワと周りがうるさいのは感じるのに、まったくその音が耳に入ってこない。
ただ現実として燃える家を見つめるだけ。
なにか叫ばなきゃいけないのに声が出ない。
燃えている。大切じゃなかったはずの家が。
ただ、困らせてやろうと、迷惑をかけてやろうと思っただけ。理想ばかりを押し付ける親父や母さんにはうんざりだったから。
どうしてこうなったのか分からない。
だけど、俺のせいかもしれない。
でも火をつけたのは夕方だ。あのとき家には誰もいなかったし、きっと今だって中には……。
『詩月さんのご主人と奥さんが中にいます!リビングに人影らしきものを見た人が……!!』
近所の人の声で俺の心臓は今までにないぐらいの速さで動いていた。消防車が到着するまでの間、周りの人たちが必死で火を消そうとしてたけど、炎は大きくなるばかり。
めちゃくちゃにしてやりたいって思ってた。
家も両親のことも、なにもかもがイヤになって。それなのに……なんでこんなに足が宙に浮いてるんだろう。
俺はバカだ。可笑しいぐらい。
ガキのくせに大人のふりをして、親なんていなくても生きていけるって勘違いして。
取り返しのつかないことをしてしまった。
俺のせいだ。
俺が殺した。
俺が親父と母さんを殺したんだ。