秘書と野獣
_____そうしてその夜、俺は初めて愛する女をこの手に抱いた。
あいつが他人に成りすまそうとしていたことなどもはやどうでもよかった。
俺があいつだとちゃんと気付いていて、そしてあいつは俺だとわかっている。
その事実だけで充分だった。
細かいことなど後からいくらでも聞き出せばいい。
これまで決して二人の間にある壁を越えてこようとしなかったウサギが、きっかけはどうあれ自らの意志で越境してきたのだ。
今はただ、俺に全てを委ねようとしているあいつの全てを受け止めよう。
俺の全身全霊であいつを____華を愛してやるだけ。
ただそれだけだった。
別人のようなあいつを見た時は混乱のあまりまさか他に男がいるのかと頭を過ぎったが、そんなことを一瞬でも疑った自分を殴ってやりたい。
素肌を晒していくあいつはどこからどう見ても純粋なままで、そのあまりの美しさに何度も息を呑んだ。
こんな俺が触れていいのだろうかと躊躇うほどに、ひたすらに綺麗だった。
震えながらも必死にしがみついてくる小さな体に、叫びたくなるほどの愛おしさが溢れ出す。こんな俺でも一人の人間を愛おしいと思えることに、心の底から喜びに震えた。