秘書と野獣
「いい加減落ち着いたか?」
「はい…ほんとにすみませんでした」
あれからしばらくの間笑いが止まらなかった私達だけど、ようやく落ち着いて車に乗った頃にはなんだかぐったりしていた。ふーっと胸に手をあてて深呼吸する私を、猛さんは目を細めて静かに見つめている。
「あ…」
やがてその端正な顔が近づいてきたと思った時には唇が重なっていた。
後頭部に回された手がさらりと私の髪を撫でる。そのまま親指が耳朶をなぞると、途端にぞくっと背中が痺れて甘い吐息が零れた。
「んっ…」
その瞬間を待ちわびていたかのように舌が侵入してくる。思わず身を固くした私の緊張をといていくかのように、彼の甘い誘惑は続く。ゆっくりと頭を撫でる手、時折いたずらに頬や首筋をなぞる指先、そして私の中で蠢く彼の熱。
全てが私の中を真っ白にし、何も考えられなくなっていく。
「……ハァッ…」
そうしてどれくらいの時間が経ったのかもわからなくなったところでようやく酸素を取り戻すことができた。完全に力の抜けてしまった体は、吸い込まれるように猛さんの腕の中に閉じ込められる。