秘書と野獣

「ったく、お前も相変わらず煮ても焼いても食えねぇ奴だな」
「最大限の褒め言葉としていただいておきます」

社長からの嫌味なんてどこ吹く風。飄々と笑って流す彼をぽかんと見つめる。
そんな私の肩が突然強い力で引き寄せられた。

「わわっ?!」

咄嗟にしがみついたのは他でもない社長の腕の中。
けれど野上君の目の前だと言うことを思いだし、慌てて体を離す……
離れないっ!!!

「し、しゃちょっ…!」
「見ての通りこいつと結婚したから。既に入籍済みでお前には入り込む隙なんか1ミクロンもねぇ。いい加減潔く諦めろ」

「ちょおっ?!!」

いきなりの喧嘩腰の大暴露に言葉も出ない。
おまけに相変わらずがっちり体をホールドされていて、どうにもこうにも身動きがとれないときたもんだ。

そのまま社長と睨み合っていた(ように見える)野上君だけど、しばらくしてその視線がこちらに移ってドキッとする。何をどう言えばいいのかと口をパクパク繰り返す私に、彼はフッとその表情を和らげた。

「お帰りなさい、華さん」
「え? あ…ただいま……って、こんなセリフ言えるような立場じゃないんだけど…」

あれだけ声高々にさようならをしておきながら、週明けには何事もなかったように戻って来るってどういうこっちゃねん。

恥ずかしくって顔向けできんわ!!

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