誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。



「……暇だなぁ。」



ゴールデンウィーク。



それはまさしく、自分にとっては退屈過ぎる連休だった。



〈お昼過ぎまで寝ておいてよく言うわよ。
もうお腹ペコペコ……。〉



昼まで寝れる幸せがビビには分からないかなぁ。



まぁでも、朝ご飯食べてないから俺もお腹が空いた。



適当に作ろうか。










〈それで、ゴールデンウィーク1日目は何するの?〉



お腹いっぱいになって満足したのか、寝転がりながらそんなことを言うビビ。



「3人との予定は明後日だし、今日はちょっと行くところがあるんだ。
ビビもついてきてくれるかな。」



〈あぁ、アレをしに行くのね。〉



この世界はとてつもなく広い。



それはもう、想像を遥かに超えるほどに。



護り屋の仕事は人を護ることだが、それにも限度がある。



俺は、この街の人しか護ることが出来ない。



改めて思うと悔しいことだが、それは仕方のないことと割り切っている。



なら、この街の人々だけでも必ず護りきろうと。



そのためには、この街のありとあらゆることを知っておく必要がある。



今日は、久しぶりに街を見て回ろうと思ったんだ。



人混みは苦手なんだけどね。










「……休みだから人が多い。」



〈むさ苦しいわね……。〉



まずは繁華街から。



辺りを見回しながら歩く。



昼間はこんなにも活気がある繁華街だけど、
夜になると……そこはほぼ異世界になる。



だが、俺は夜の繁華街が嫌いだ。



全てが良しとされてしまう気がするからだ。



それが例え、殺しだとしても。



そんなことを考えながら、路地を曲がり奥に入る。



くねくねと入り交じった路地は、1回入ったら出られない迷路のようで。



「この路地全部を覚えるの、苦労したんだよなぁ。」



〈路地なんて面倒くさいもの、作る必要ないわよね。〉



「ほんとだよね。」



そう話していると、目的地に着いた。



「やぁ、元気そうだね。2匹とも。」



〈真琴の旦那じゃないですか!!〉



〈わわ、真琴だ~!!!〉



とあるお店のごみ捨て場にいたのは、カラスの兄弟を筆頭とするカラスの集団。



「この間はお世話になったね。」



〈いえいえ!!それが仕事ですので!!〉



〈そうだよ~。意外に楽しいし~。〉



堅いカラス兄と緩いカラス弟。



いつ見ても仲いいなぁ。



「最近は、何か変わったことはない?」



〈特には……ないですね。〉



〈真琴が出てこなくてもいいやつばっかだしね~。〉



「そっか。じゃあ、そろそろ始めるけどいい?」



〈アレっすね!!いいですよ!!〉



〈眠くなるんだよね~アレ。〉



「ハハッ、面倒かけてごめんね。」



カラスの集団は大人しくなる。


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