誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
料理が運ばれてきて、私の前にはオムライス。
オムライスは王道。
オムライスなら何杯でもいける気がする。
そんな時、ふと来都の料理の横にある瓶に目が止まった。
「……それ、なに?」
「……あぁ、木の実だ。」
いや、それは分かるんだけど……。
「へぇー、今日は連れてきてるんだねぇ!」
「滅多に顔見せないよね。」
連れてきてる?顔見せない?
頭をハテナマークがもうすぐ埋め尽くそうとしたところで。
「……おい。」
来都の胸ポケットがモゾモゾ蠢いた。
そこから顔を出したのは……。
「……う、そ…………。」
〈……また、会ったね。〉
あの雨の日、空き教室で出会った黒リスーシヴァだった。
あの日学校にいたのは、来都が連れてきたから?
またねって言ったのは、次また会えるのを知っていたから?
シヴァの契約者は……来都だった……?
「……真琴、大丈夫か?」
「……あ、あぁ……うん。」
突然の登場に頭が追いつかなくて。
シヴァに聞きたいことは沢山あったのに。
そんなの全部吹っ飛んでしまった。
そんな私の心情も知らずに、シヴァは何食わぬ顔で木の実に齧り付いている。
「真琴食べないのー?」
「……た、食べる……。」
変に勘ぐられないよう、普通の顔をした。
でも正直、オムライスの味なんか全然分からなかった。
〈……僕に聞きたいことがある、って顔してる。〉
(……。)
〈……今は来都とのテレパシーを切ってる。だから、普通に喋れば?〉
(……来都とは会話が出来るんだ?)
〈……契約者とは出来る。
ただ、アンタの能力に比べれば小さいものだよ。〉
宵闇色の瞳が私を見る。
3人は相変わらず楽しそうに話をしていて。
同じ空間にいるのに、私とシヴァだけ隔離された時間軸にいるようだった。
(まさか、来都がシヴァの契約者だとは思わなかった。)
〈……いずれ分かること。
それに、僕"たち"は契約者に干渉しないことになっている。〉
僕"たち"?
(シヴァとビビだけじゃない……ってこと?)
〈……契約者はいずれ交わる運命にある。
僕に聞くってことは、黒猫には聞かなかったんだ?〉
もちろんビビに聞くのが正しいと思った。
でも……
(ビビとは小さい頃から一緒なんだ。
それを聞いてしまったら……関係が変わる気がして……。)
私はただ、それが怖かった。
ビビは私の唯一の家族。
それが……壊れていく気がして。
〈……1つだけ忠告しておくならば。
契約以上の関係を持つことはやめた方がいい。〉
(……っ、シヴァと来都は違うの……?)
〈……僕は契約以上の関係を望まない。〉
シヴァがそう言った瞬間、シヴァの想いが流れ込んできた……ような。
〈……また聞きたいことがあるなら訪ねてくればいい。〉
(干渉しないとか言っといて、優しいんだね……。)
〈……今のアンタ、どうすればいいのか分からない、って顔してるからね。〉
(ありがとう……。)
シヴァの隠れた優しさに、今は甘えておこう……。
正面から向かい合うには、まだ心の整理がついてないから。
それから、お店を出てまた色々回ったけれど、頭の中はずっとシヴァの言ったことを考えていた。