誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
(シヴァside)
来都の部屋の窓から月を眺める。
来都は風呂に入っていて今はいない。
……不思議なやつだった。
最近、来都がやけに機嫌がいいとは思ったが、まさかその理由があの黒猫の契約者だとは。
来都が楽と桜悠以外の人に関わることはまずない。
そもそも感情が表情に出ることもまずないが。
それが、今日1日だけをとってみても分かる。
自分から関わりにいったかと思えば、心配までしていた。
というより、逆に黒猫の契約者の方が来都っぽかった。
それに僕も契約者には干渉しないはずが、あの契約者には少し世話を焼いてしまったようだ。
反省、だな。
「……今日、様子がおかしかったな。」
声がした方を見てみれば、風呂上がりだからか髪から水を滴らせた来都が立っていた。
〈……誰が?〉
「……シヴァ。」
〈……別に、なにも。〉
「……昼食の時、通信切ってただろ。」
バレていたか。
というか、話かけてきたのだろうか。
〈……たまたまだよ。〉
「……真琴と何を話していた。」
そこは疑問形じゃないんだな。
〈……何を言ってる。
僕は契約者としか話せない。〉
そう。来都の中では、あくまであの契約者は一般人なのだ。
来都が気づくまで僕から話すことはない。
そこまで勘づく来都の方に、僕は驚くけれど。
「……なら、いい。」
〈……随分気に入っているんだね。〉
そう言うと、来都は少し笑った……気がする。
「……そうだな。」
来都が笑うのなんて久しぶりに見た。
ほら。
契約という関係だけでも充分だ。
その先を求めるなど、おこがましい。
end