誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。



(シヴァside)



来都の部屋の窓から月を眺める。



来都は風呂に入っていて今はいない。



……不思議なやつだった。



最近、来都がやけに機嫌がいいとは思ったが、まさかその理由があの黒猫の契約者だとは。



来都が楽と桜悠以外の人に関わることはまずない。



そもそも感情が表情に出ることもまずないが。



それが、今日1日だけをとってみても分かる。



自分から関わりにいったかと思えば、心配までしていた。



というより、逆に黒猫の契約者の方が来都っぽかった。



それに僕も契約者には干渉しないはずが、あの契約者には少し世話を焼いてしまったようだ。



反省、だな。



「……今日、様子がおかしかったな。」



声がした方を見てみれば、風呂上がりだからか髪から水を滴らせた来都が立っていた。



〈……誰が?〉



「……シヴァ。」



〈……別に、なにも。〉



「……昼食の時、通信切ってただろ。」



バレていたか。



というか、話かけてきたのだろうか。



〈……たまたまだよ。〉



「……真琴と何を話していた。」



そこは疑問形じゃないんだな。



〈……何を言ってる。
僕は契約者としか話せない。〉



そう。来都の中では、あくまであの契約者は一般人なのだ。



来都が気づくまで僕から話すことはない。



そこまで勘づく来都の方に、僕は驚くけれど。



「……なら、いい。」



〈……随分気に入っているんだね。〉



そう言うと、来都は少し笑った……気がする。



「……そうだな。」



来都が笑うのなんて久しぶりに見た。



ほら。


契約という関係だけでも充分だ。



その先を求めるなど、おこがましい。


end














< 44 / 182 >

この作品をシェア

pagetop