誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
カランコロンと鳴るのを耳にしながらbarの雰囲気に浸る。
「よぉ。」
手を軽くあげていう燐理と由樹さん、そしてテーブル席の向かい側には1人の女性が座っていた。
「あの、この人は……」
その女性は表情に色は無いけれど、どこか気品を持ち合わせている人だった。
「あぁ、このフード被っている人がwhite castleなんです。」
『……。』
由樹さんの横に座りながら、ジッと女性を観察し続ける。
「あなたがwhite castle……。
私は、成宮楓(ナルミヤ カエデ)と申します。
成宮グループ会長の娘でございます。」
成宮と聞いて彼女の気品さに納得がいった。
成宮グループはここ2・3年で力を持ち始め、今では三大グループになろうという所まできているとか。
「今回はどうしてもwhite castleさんのお力をお借りしたいと思いましてお伺い致しました。」
『……始めに1つ言う事があるとするならば。』
駆け引きはこの職業にとって1番重要だ。
初対面で中身が分かる人間はそうそういない。
だから……試させてもらおうか。
『……俺は財閥が嫌いだ。
権力を奮い、自分より愚かな人を愚弄する。
誰も止めず、ただ自分さえが良ければと自分を正当化する。
散々人を使っておいて、役に立たなくなると感情もなく捨てる。
財閥に使われる、権力のない人はまるで玩具だ。』
燐理も由樹さんも何も言わない。
それは理解してるからだ。
かつて自分たちが大きな勢力にそうされてきたように。
『……護り屋の所に来るのがどういう人か分かるか?
財閥に捨てられた人が1番多いんだ。
財閥という権力に誰も立ち向かえず、誰も自分を救ってくれないという状況で、最後の手段として、噂だけかもしれない幻の存在である護り屋の所に来る。
俺は、俺たちは幾度となくそれを見てきた。
そして、そんな人たちの気も知らずに、自分の時になったら掌を返して俺に縋ってくる権力者も。』
捲し立てるように言うと、静寂が訪れた。
私は事実を言った。
ただそれだけだ。
楓さんが悪いわけじゃない。
だが、その現実は権力者が1番自覚しなければいけないことで。
本当なら、私が燐理や由樹さんの代わりに制裁をしにいきたい。
私の仲間を傷つけておいて無事でいられると思うな、と言ってやりたい。
だが、燐理や由樹さんがそれを望んでいないから。
だから私は権力者たちでも護ると腹を括っている。
それが仲間のためになると思っているから。