誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
(燐理side)
依頼主が帰ってからというもの、俺たちは動くことはなかった。
なぜなら、真琴の雰囲気が変わったからだ。
探しているという弟の名前を聞いた時から。
真琴はテーブルをじっと見ながら呟く。
「……今回は俺に任せて。」
その声は、やはりいつもと違って聞こえた。
「でも……。」
「……お願い。
1人じゃ無理だと思ったら言うから。」
こりゃあ駄目だ。
こうなったら聞きゃあしねぇ。
「わぁったよ。今回はお前に任せる。」
「燐理!!」
「しゃあねーよ、由樹。
俺らの上は真琴だろ。」
そう言うと、由樹も苦々しい顔をしながらも了承した。
「分かった……。でも、無理はダメだよ?」
「……ありがとう。」
まぁ、由樹が言うのも無理はない。
その弟は、殺し屋に狙われている。
弟を殺すと連絡がきたらしい。
こちらは居場所も分からず、殺し屋は居場所を知っている。
だから難しい任務……のはずだったが、まぁ問題はねぇだろ。
「真琴。お前、その伊佐波桜悠っつーやつのこと、知ってんだろ。」
「…………あぁ。」
んなことだろーと思った。
じゃなきゃ、知らねぇやつの名前聞いて動揺するわけねぇからな。
「そいつが見つかってんならもう大丈夫だろ。
おら、ガキは早く帰って寝ろ。
明日から任せたからな。」
「……分かった。」
そういって真琴はbarを出ていった。
「まさか探してた弟さんが、真琴くんと知り合いなんて。」
「あれは知り合いっつーもんじゃねぇよ。
知り合いよりもっと濃いもんだ。
仲間、なんじゃね?」
「仲間、か……。」
いいんじゃねぇの?
動揺するほど、そいつが大切だっていう証拠だろ?
そういうのが、俺たち以外にも出来たっていうことだ。
俺たちは……所詮仕事仲間みたいなもんだ。
本当の仲間は、きっとそいつらなんだろう。
真琴を救えるのも、きっと俺たちじゃない。
なら、やっぱり今回の依頼は真琴に任せるべきだ。
「なに拗ねてんだよ。」
「拗ねてないよ。
僕たちの他にも仲間がいて、良かったって思っただけ。」
「ガキだなー。」
「だから違うって。燐理のバカ。」
「んだとこのガキ!」
由樹はまだ真琴と知り合って日が少ないから仕方ねぇけど。
俺はガラにもねぇけど望んでんだ。
いつか……いつか真琴がこの仕事を辞めることを。
そして、普通の生活を送れる人間に戻ることを。
少しでもこっちの世界に未練が残らねぇように。
「……んとにしょうもねぇな……。」
それが実現するのは、まだ当分先だ……。
end