誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
私は、横にいる人物を悟られないように見る。
桜悠はいつも通り携帯を弄りながらパンを食べていた。
それはもういつも通りに。
狙われていることはもう気づいているのだろうか。
「真琴どうしたのー?ボーっとしちゃって。」
「……あ、いや……何にもない。」
こんなに近くにいるのに、こんなにももどかしい。
そう考えると、私はみんなのことを何にも知らないんだな……。
どうすれば桜悠も楓さんたちも傷つかないのか……。
考えれば考えるほど違う疑問が生まれて、気づいたら放課後になっていた。
帰り道、いつもより遠回りして繁華街を通る。
考えてる中、ずっと浮かぶのは屋上での桜悠の表情。
このままだと、桜悠は永遠にあんな表情をして過ごすことになる。
それだけは何としても避けなきゃいけない。
そんなことを考えながら歩いていると、どこからか声が聞こえた。
「調子のんじゃねーぞ!!
テメェ一人なんかぶっ潰してやる!!」
よくある喧嘩か……と思いながら声のした方を横目で見る。
だが、それは全然よくある喧嘩だけでは済まなかった。
男たちに囲まれながら路地に入っていった人に見覚えがあったからだ。
男たちが消えていった路地に入ってみると、少し奥に行った所で喧嘩が始まっていた。
7対1。数だと不利だな……。
だが、加勢しようとも思わなかった。
それだけ……桜悠の雰囲気は違っていた。
ものの数分で全員を倒した桜悠は、何も感情のない瞳で男たちを見下ろす。
「君たち、雇われた人たちだよね?
なら伝えておいてくれるかな?
"俺はアンタみたいな人を売る奴のところには戻らない"って。
"俺にとって、もう次はない"ともね。」
そう呟いた桜悠の雰囲気は刺々しく、もう誰も近づけさせないと言っているようだった。