誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
(桜悠side)
繁華街を歩いていると、いつの間にか俺の周りを囲む奴らがいた。
「お前……伊佐波グループの次男だな。」
ガラが悪そうなナリしてこんな所に混ざりこんでくるなんて、余程切羽詰まってるみたいだね。
「……へぇ、もう追手が来ちゃったんだ?」
「お前を連れ戻すように命令されている。
覚悟しろ。」
「連れ戻す、ねぇ……。」
自分から捨てておいてよく言うよ。
「なら、力ずくでやってみれば?
アンタたちなんか暇潰しにもならないよ。」
「調子のんじゃねーぞ!!
テメェ一人なんかぶっ潰してやる!!」
路地に入ると、すぐに始まった。
こんな奴ら、何人いたって変わらない。
逆にこんな少ない人数で俺を止めようなんて、浅ましいね。
なぜなら、俺は……。
片手で顔を覆い、その手を外した時には……笑っていた。
「……つまんねェなぁ、もっと楽しませろよなァ?」
black killersの黒豹だから。
喧嘩はすぐに終わった。
手近にいる男を足で踏みつけて、言う。
「君たち、雇われた人たちだよね?
なら伝えておいてくれるかな?
"俺はアンタみたいな人を売る奴のところには戻らない"って。
"俺にとって、もう次はない"ともね。」
あぁ、張り合いなかったなぁ。
スイッチが入り始めちゃったからウズウズする。
だが、スイッチのお陰で気づいた……薄い気配。
普通の人じゃ有り得ないほど薄めてある。
こんなことが出来るのは、俺の知る限り1人しかいない。
その気配は少しすると、静かに消えた。
「……見られちゃったかぁ。
まだこの段階じゃないはずなんだけど……。」
あの様子だと、まだ俺が黒豹だとはバレてないみたいだけれど。
正体を明かすのはまだ早い。
こんな所で失敗してしまったら、アノ人の願いが無駄になってしまう。
それにしても、こんな時に家が接触してくるなんて……。
さて、どうしたものか。