誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。



「フフッ、望むところだよ。
後になって後悔しないでよね、帝。」



〈ケッ!また厄介なモンを拾っちまったなァ。〉



瞼を閉じる。



俺の中にある何かが手の上にある羽に呼応するように脈打ち始める。



その瞬間、羽から光が溢れ出し俺を飲み込んだ。



脂汗をジワリと額に浮かばせながらも、受け入れようとすることを止めなかった。



神の力を授かるっていうのはこんなにも苦しいものなのか……。



どれくらい経ったか分からなくなった頃、ようやく光は収まり羽も無くなっていた。



〈カハッ!!弱そうに見えて案外根性あンじゃねェか。〉



「帝って本当に失礼だよね。
俺、これでもblack killersのNo.2なんだけど?」



〈そのNo.1様も堕ちかけじゃねェかヨォ。〉



「……堕ちかけなだけさ。
本当に堕ちはしないよ。










だって俺たちがいるから。」



俺たちと……white castleがいる限り、アイツは堕ちはしない。



〈まァ、見ものだゼ。〉



羽を広げながら帝は鳴いた。



「そういえば、帝にも能力があるんだよね?」



〈あん?あァー……説明すンのめんどくせェから直接体験すりゃあいいんジャネ?〉



首をかしげてみせれば、俺の顔近くに何かが飛んできた。



「……っ、危ないなぁ。」



飛んできたのは羽で、俺の頬には一筋の血が流れた。



〈ホラよ。傷に当ててみ?〉



また舞い降りてきた1枚の羽を、恐る恐る頬に近づける。



すると、そこを光が包み……あっという間に痕も残らないほど治癒された。



「これって……治癒能力?」



〈大抵の傷ならそれで治るゼ。
深手なら枚数重ねりゃ何とかなるダロ。〉



俺はまださっきまで傷がついていた頬をジッと見ていた。



「……帝には似合わない能力だね。」



〈だが、今のテメェには合うだろ?〉



その言葉に、酷く胸が締め付けられた。



帝が俺の前に現れた理由も、全て自分が1番理解している。



だからこそ、帝の能力を見た時……運命を呪おうかと思った。



あの時の自分に対する戒めだと。



唐突にそう思った。



〈人間っつーのはつくづくウゼェ生き物だナ。〉



「……そうだね。
じゃあ、そんなウゼェ人間に手を貸す帝はお人好しだね。」



〈ケッ!!全くダゼ。〉



愚痴を零しながら俺の肩に乗ってくる帝。



〈疲れた。連れてけヨ。〉



「フフッ、はいよ。」





これが、第三神賢者 伊佐波桜悠と使徒 帝の出会いだった。



end















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