誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
今日は満月だ。
月の光が、真実を晒し出す。
「まさか、お前と乗り込む時が来ようとはなぁ。」
「……普段は管轄違うから。」
「ま、つっても主役はお前だろーがな。」
「……サポートよろしく。」
«燐理で真琴くんのサポートなんか務まるかな?»
〈無理なんじゃないかしら?〉
「おい、今なんつった由樹。」
«はいはい、じゃあ……そろそろ予告の時間だよ。»
場所は伊佐波グループの邸宅。
見取り図でも思ったが、相当大きい。
昼間、来都と楽に任せてと言ってから、準備にとりかかった。
少ない時間で、内部の見取図や防犯カメラの位置の把握、そして……桜悠がどこに囚われているのかを知る必要があったからだ。
私がハッキングをしようとしたところで、由樹さんが手を挙げてくれた。
"僕、こう見えて機械系は得意なんだ。"
その言葉通り、由樹さんのハッキング技術は凄いもので、計画をスムーズに立てることが出来た。
「……由樹さんがいてくれて良かった。」
«燐理と違って喧嘩とかは出来ないからね。
せめてそっち系だけでもと思って習得しておいて良かったよ。»
切り込み隊長のwhite castleとサポート役の燐理、そして司令塔役の由樹さん。
それは、私たちの新しい形だった。
「……予告状は由樹さんが?」
«うん。"大切なものを取り戻しに参じます"ってね。»
「それ……もう怪盗じゃねーか。」
«気にしない気にしない。»
〈何でこの人たちは危機感がないのかしらね……。〉
ビビはいつも通り呆れていた。
«じゃあ、始めようか。»
「しゃあねーな。」
「……ビビ。」
〈えぇ。〉
嵌めた指輪の光が、私と燐理を包み込む。
能力を特定の人に共有するのも、私たちが編み出した技だ。
でも、今日は……いつも以上に力が溢れ出てくる。
大切だから、だろうか。
今ここにいる人たちが。
ココに囚われている桜悠が。
桜悠の帰りを待つ来都と楽が。
「ハンッ、すかした面しやがって。おら、行くぞ。」
『……あぁ。』
仮面を被り、white castleに成り代わる。
今日だけは……"怪盗"white castle。
『……俺"たち"の大切なもの、返してもらおう。』