誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
«次を左、その次を右に曲がった突き当たりの部屋がいいよ。
少なくとも、廊下で挟み撃ちされるよりは戦いやすい。»
「あいよっと。」
『……了解。』
後ろを見ると、追っ手が増えてきた。
無駄に1フロアが広すぎて、倒しても倒しても現れてくるし、終いには挟み撃ちにされそうになる。
どれだけ金積んで人雇ってるんだか。
ビビの特性を使ってもキリがない。
「そこか。」
とりあえず部屋に駆け込むと同時に鍵もかける。
少し、ペースダウンしないと。
「おい、ここ……。」
『……書庫?』
壁一面に本で覆い尽くされた図書館のような部屋だった。
「法律学に経済学、心理学……。
ケッ、御曹司っつーのも大変だなまったく。」
燐理がウンザリした表情で本を眺めるなか、私はただ吸い込まれるように1つの本を手に取っていた。
「なんだよ、それ。」
『……アルバム。』
パラパラと捲って写真を見ると、2人の男の子とその真ん中にいる1人の女の子の写真が目に留まった。
この女の子は……楓さん。
少し背の高い男の子がきっと楓さんの婚約者で、もう1人の笑顔で写真に写る男の子が……桜悠。
写真の中の子供たちは……とても幸せそうだった。
『……なぁ、燐理。』
「あ?」
『……俺は、この笑顔を……もう一度桜悠の顔に咲かせられるかな……?』
誰かのためとかそんなのじゃなくて……桜悠が自分のために笑えること。
そんな日を、私は作ってあげられるのだろうか。
「んなこと心配してんな。
まずはそいつをこっから出さなきゃ意味ねぇだろーが。」