誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。



«次を左、その次を右に曲がった突き当たりの部屋がいいよ。
少なくとも、廊下で挟み撃ちされるよりは戦いやすい。»



「あいよっと。」


『……了解。』



後ろを見ると、追っ手が増えてきた。



無駄に1フロアが広すぎて、倒しても倒しても現れてくるし、終いには挟み撃ちにされそうになる。



どれだけ金積んで人雇ってるんだか。



ビビの特性を使ってもキリがない。



「そこか。」



とりあえず部屋に駆け込むと同時に鍵もかける。



少し、ペースダウンしないと。



「おい、ここ……。」











『……書庫?』



壁一面に本で覆い尽くされた図書館のような部屋だった。



「法律学に経済学、心理学……。
ケッ、御曹司っつーのも大変だなまったく。」



燐理がウンザリした表情で本を眺めるなか、私はただ吸い込まれるように1つの本を手に取っていた。



「なんだよ、それ。」



『……アルバム。』



パラパラと捲って写真を見ると、2人の男の子とその真ん中にいる1人の女の子の写真が目に留まった。



この女の子は……楓さん。



少し背の高い男の子がきっと楓さんの婚約者で、もう1人の笑顔で写真に写る男の子が……桜悠。



写真の中の子供たちは……とても幸せそうだった。











『……なぁ、燐理。』



「あ?」



『……俺は、この笑顔を……もう一度桜悠の顔に咲かせられるかな……?』



誰かのためとかそんなのじゃなくて……桜悠が自分のために笑えること。



そんな日を、私は作ってあげられるのだろうか。



「んなこと心配してんな。
まずはそいつをこっから出さなきゃ意味ねぇだろーが。」


< 72 / 182 >

この作品をシェア

pagetop