誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
(桜悠side)
ここに戻ってきた日から、何日経っただろう。何時間経っただろう。
それだけ、この空間は……俺の感覚を狂わせる。
ここに縛られてからの扱いは……あの頃と何も変わらなかった。
殴られ……蹴られ……切られ……。
でも、行為は変わらずとも……それを受ける俺自身は変わっていた。
泣き叫んで許しをこいたあの頃とは違う。
耐えられた。
どうせ治る。人間の身体は丈夫だ。と無理やり言い聞かせながら耐えた。
だが……この日だけは違っていた。
「しぶといヤツだな、お前は。」
いつもは部下にやらせているはずが、今日は父親も来た。
「昔とは……ッ、違うんでね。」
「そのようだな。やはり躾とは難しい。
ならば……少し強引な手段をとってやろう。」
そう言って懐から出したのは3枚の写真。
だが、それは普通の写真ではなかった。
少なくとも俺にとっては。
「……ッ!!……その3人をどうするつもり?」
そこに写っていたのは……来都と楽、そして……最近撮られたと思われる真琴の写真。
やっぱり監視してたのか……ッ。
「頭のキレるお前ならもう理解してるんじゃないか?
お前の言動次第で、コイツらがどうなるのか。」
そんなの、どんなバカでも分かる。
そうならないように戻ってきたのに。
「……戻ってきただけじゃ足りないって?」
「お前は嘘をつくのが下手だからな。
口では服従を言葉にしていても、瞳は反抗心でたぎっている。
その瞳が色を失うまで、ここから出られないと思え。」
色……?
そんなもの、初めからないというのに。
もしあるというのなら、それは俺の色じゃない。
来都たちがくれた色だ。
借り物の……色。