誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
『……違う。
それは偽りの"伊佐波 桜悠"。
本物の"伊佐波 桜悠"は何を思ってる?
今あなたがここを出て、一番に会いたいと思う人は……誰?』
もう分かっているでしょう?
もう浮かんでいるんでしょう?
あとは、それを言葉にするだけ。
そしたら私は……その思いを護ろう。
だから、桜悠……自分に正直になって?
「……あいつらに……会いたい……ッ。」
あいつらが誰かなんて、聞かなくても分かった。
離れたくなくても、離れなければならなかった人たち。
『……それでいい。それが、本物。
なら、その"桜悠"は……俺が護ろう。』
少し前から感じた気配に、後ろを振り向く。
そこには、俺たちを通さんとする……殺し屋が立っていた。
こいつが秘書が言っていた殺し屋か。
雰囲気が違う……。
blackkillersの黒蜥蜴と同じ……独特さ。
『……お前が雇われた殺し屋だな。』
「あぁ、そこに縛られている"出来損ない"を排除しろと依頼されてな。
そういうお前は、あの護り屋か。
誰かに依頼されたのか?」
『……そうだ。だから、護らせてもらう。』
「果たしてそいつに護られるほどの価値があるのか?」
その言葉に、私の中にある一本の線が切れた。
『……価値?そんなもの、俺には関係ない。
桜悠は……俺の大事な人だ。』
ふつふつと内側から煮えたぎるもの。
それを今日は……抑えない。
私の大切な人を、バカにするな。
『……桜悠、ちょっと待ってて。
すぐ終わらせる。』
「ダメだ……ッ。
もう……誰かが傷つくのを見たくない……ッ!!」
『……俺はwhite castle。
依頼は果たさせてもらう。』
大丈夫。私は傷つかないよ。
殺し屋になど……負けるものか。
『……お前、運が悪いな。
お前は俺の逆鱗に触れた。覚悟しておけ。』
「楽しみだな。」
『……ビビ、段階を1つ上げる。』
〈えぇ、いいわ。
真琴の行く手を阻むやつは、私も容赦しない。〉
右手に嵌めた指輪が光った。
『……"承"。』
ブワッと身体から発する光の量が増した。
「……ッ、力を解放したのか。」
『……解放?違う、"1つ"リミッターを外しただけだ。』
三大奥義の1つ、力を解放するための術式。
起、承、転、結で分けられてあり、通常は起で事足りる。
だが、今回は……私を怒らせた。
その理由さえあれば……リミッターを外す理由になる。