誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。



外に出てみれば、由樹さんと……楓さん、そして車椅子に座る男の人がいた。



あれは……桜悠のお兄さん。



「お疲れ様、white castle。燐理も。
一時期はどうなるかとおもったけどね。」



「しゃあねーだろ。
2人であの人数は鬼畜だっつーの。」



「まぁ、確かにあれは無謀だったよね。」



私はじっと楓さんと桜悠のお兄さんを見つめる。



楓さんは私の視線に気づくと頭を下げた。



「white castleさん。
本当にありがとうございました!!」



『……いや、依頼を完遂しただけ。』



そこである一つの疑問を口にする。



『……あの依頼、本当の依頼主は楓さんじゃない……。










貴方ですよね?桜悠のお兄さん。』



「バレて……いましたか。」



桜悠のお兄さんはそっと微笑んだ。



その表情はやはりどこか桜悠と似ていて。



「俺は父さんが桜悠にしていることを知っていました。
でも……あの頃の俺は自分のことで精一杯で、桜悠を護ってやることが出来ませんでした。
だから、お願いしたんです。
護り屋のあなたに。」



直接じゃなくても、間接的にでもいい。



もう桜悠は苦しむ必要はないから。



そう言っているように聞こえた。



『……桜悠はもう大丈夫。
立ち上がって進む力がある。』



「本当に……ありがとうございました。」



すれ違いはやり直せる。



思いと行動が噛み合わないと感じた時、一度立ち止まってみればいい。



きっと進むべき道を教えてくれる人がいる。



桜悠にとっては、それが来都と楽だった。



桜悠は良かったと思う。



そういう人に出会えたのだから。



戻れなくなってしまう前に気づいたのだから。










私のように……罪を重ねることもなく。



空を見上げると、満月が私を照らしていた。



まるで"忘れるな"と言っているかのように。



大丈夫……私は忘れてないよ。



あなたのことも。罪の重さも。



〈……真琴……。〉










私はまだ気づいていなかった。



私自身を蝕んでいる存在に……。



そして、次なる影が動き始めているということに……。














< 87 / 182 >

この作品をシェア

pagetop