【完】『そろばん隊士』幕末編

ともあれそういったいきさつで岸島、徳田、芦名の三名に原田が加わり、近藤が囲い屋敷にしている深雪太夫の妾宅に着くと、

「邪魔するぜ」

といきなり原田がずかずか入ってゆく。

「岸島くん、ついてきなさい」

言われるがまま三人も入る。

物音に驚いたらしい深雪太夫がするする、と式台まで進み出て、

「これは原田さま、いかがされましたか?」

「火急の件があって、取り急ぎ近藤さんに会いに来た」

「ならばお取り次ぎいたします」

深雪太夫は奥へ消えた。

すると原田が、

「岸島くん、裏へ回れ」

岸島と芦名が裏木戸へ回る。

原田は式台に腰を下ろすと、

「徳田くん、飲むか」

と腰に提げてあった竹筒の酒をグヒグビと飲み始めたのである。



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