【完】『そろばん隊士』幕末編
「これぁ灘の生一本だからよく効くぜ」
と徳田にも一口飲ませた。
が。
竹筒がやたらと太い。
「これはな、一升入るよう作らせたのさ」
豪快に大声で笑う。
ぐびぐひと飲むとすぐ空いた。
「徳田くん、これに酒を喉首まで詰めてもらってもらえまいか」
と徳田を酒屋へ走らせた。
いっぽう。
裏口の様子を中から近藤が見ている。
「…あれでは逃げられんではないか」
ましてや。
土方から聞く限り、岸島は居合の使い手でもある。
そこに深雪太夫が、
「原田さまはあと一升飲まれるおつもりです」
やれやれ、といった顔になった近藤は、
「通せ」
苦い顔のまま言った。