【完】『そろばん隊士』幕末編
座敷に原田と岸島、芦名、徳田が通されると、近藤と対峙をする姿勢となった。
「…原田くん、どういうことかね」
「近藤さんよ…いやさ勝五郎、お前さんは新撰組をどうしたいつもりかえ?」
脱藩する前は江戸詰めであったからか、酔うとさらに言葉がべらんめえになる。
「岸島くんは?」
「このままでは新撰組が割れます。局長の存念をとっぷり、小半時ばかり拝聴いたしたく存じまする」
この小半時というのが怖い。
しかも。
岸島は普段から怒鳴ることがなく穏やかな反面、このとっぷり聞かせてもらうという発言に、胸中にあるであろうさまざまな感情を、逆にあらわにしない分、余計恐ろしかったらしい。