【完】『そろばん隊士』幕末編
加納の指図で、
「戸板を」
と運ばれてきて伊東の亡骸を乗せ、去ろうとしたときである。
「藤堂くん」
「…斎藤さん」
たたずんでいたのは斎藤一である。
「悪いが、君たちはもう帰れない」
これが合図であったらしく、
「藤堂くん、覚悟!」
永倉新八が斬りかかった。
「永倉さん…そういうことでしたか」
原田が天水桶の陰から馳せ出ると、加納を槍で突く仕種をした。
「加納、お前だけは許さん」
原田は何か加納に遺恨があったらしいが、今となってはわからない。
たちまち斬り合いが始まった。
岸島はまだ天水桶の陰にいる。
が。
柄に手をかけ、抜く瞬間を狙っていた。
その間にも。
壮絶な斬り合いで、火花と音で辺りは騒然としていた。