【完】『そろばん隊士』幕末編
永倉と藤堂は鍔競り合いになっていたが、
「永倉!」
原田の声で一瞬離れた。
藤堂は翻った。
その時。
「…!」
藤堂を一刀で斬ったのは、三浦常三郎であった。
「岸島さん、やりました!」
声がする。
視線を切った。
その一瞬、岸島の左腕に痛みが走った。
わずかな隙をついて、毛内有之助の切っ先がひらめいたのである。
次の刹那。
岸島の刀は地を摺るように下から毛内を斬り上げた。
「…さすが居合の岸島というだけはある」
しかし。
人斬り鍬次郎こと大石鍬次郎が毛内に斬りかかり、激しい打ち合いとなった。
岸島は再び刀をおさめ、息を整えた。