姫様と魔法のキス
婚約パーティーが開かれる日とあって、城の中は騒がしかった。
婿養子ということで、アジーン城で開催されることになっているため、朝からシェフや侍女たちが慌ただしく動いていた。
「あのね、前にも話したと思うんだけど…」
「ニカ様のお友達もお見えになるんですよね。動物とお話出来るという」
「そうなの!だから、もし来たら準備もお願いしたいのだけれど…」
「かしこまりました」
トミーに確認し直し、レゼのための準備を施す。
レゼ用に事前に選んでおいた服をトミーに託し、ニカは重いドレスを纏うためにきついコルセットと格闘し始めた。
「ニカ様、レゼ様という方がお見えになっておりますが、如何致しますか」
「通してください」
ドレスを着終わり、椅子に座って髪や化粧を整えている時に、レゼがやってきた。
門兵に連れられて部屋へと来たレゼは居心地が悪そうにそわそわとしていたが、ニカを見るとその動きを止め、固まった。
「ありがとう、下がっていいわ」
「はっ!」
門兵と共に一旦トミーたち侍女にも下がってもらい、レゼと2人きりになる。
レゼは斜めに顔を向けながら、ニカを横目で見た。
「そうしてると、本当に姫みたい」
「本物の姫ですが」
笑って言うレゼに、ニカも笑う。
そして、ニカは椅子から立ち上がるとレゼに対してお辞儀をした。
「今日は本当に来てくれてありがとう。お陰でとっても心強いわ」
「別に何も出来ないけど…」
それでも、いてくれるだけでどんなに心強いか。
目をそらしながら頭をかくレゼを見つめ、ニカは心から感謝した。
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