姫様と魔法のキス
「失礼します。謁見をお許しください」
「……入れ」
政務室の扉をノックすると同時に聞こえた声に、父王は訝しみながらも許可を与える。
ゆっくりとした扉から現れたのは娘が連れてきた青年で、父王はなおさら眉間の皺を深くした。
「……何の用かね?」
「ニカ…様のご結婚のことで…」
「ニカが何か言ったのか」
アロガンとの対面で緊張してはいたものの、よく笑っていたし、何よりアロガン自体が好青年であるため、ニカもアロガンをきっと好きになると考えていた。
しかし、実はとても不満であり、この青年を遣って何か言いたいことを伝えにきたのかと思えば、レゼは首を横に振った。
「今からお話しすることは、自分の単独で証拠もありません。けれどもこれを黙っていることでニカが傷つくのであれば、露見しない訳にはいかないと思ったので、申し上げます」
スッと父王の目を見て、覚悟を決めたように息を吸う。
そして、口を開いた。
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