姫様と魔法のキス


「疑念が解消されるまでは、まだ婚約は置いておきたいと思うのです。一国の王として許されないことかもしれませんが、1人の父親として、どうか娘の本当の幸せを願わせて頂きたいのです。
無礼を承知ではありますが、どうか、どうかお願い致します」


席を立ち深く頭を下げる父王の姿に、会場が騒めく。

当然その姿はニカたちの目にも写り、何事かと慌てて父王たちの元へと駆けつけた。


「お父様!どうしたの!?」


何も理由を言わない父王の代わりに、エンガンが口を開く。


「頭を上げてください。そのような噂が流れること自体こちらにも問題がありました。直ちにアロガンにも確認し、身の潔白を証明させます。それまで、この婚約はなかったことにさせて頂いてもよろしいでしょうか」


そう言い残し、エンガンはニカと共に側に寄って来ていたアロガンを呼び寄せ頭を下げさせる。

そのまま連れて来ていた兵士や従者たちを引き連れ、会場の外へと向かっていった。


「お父様、何があったの?」

「今回の婚約、白紙に戻すことになった」


父王の言葉を聞いてニカは目を見開く。

なぜ、どうしてそのようなことになったのか尋ねても父王は口を開くことをせず、会場に残っている者たちに婚約が無くなった旨と謝罪の言葉を繰り返すだけだった。


会場からは人々が去っていき、残ったのは城勤めの従者や侍女、そしてニカやレゼだけになる。

父王はニカにバレないように従者に一枚の紙を預けると、未だに問い続けるニカを連れて会場を後にした。


残されたレゼは、従者に案内されて城の外へと連れていかれる。

そして、城の門を潜る時に従者から一枚の紙を受け取った。




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