東の空の金星
私は慌ただしく乗せられた車の中で指輪を見つめてみる。

すごく大粒のダイヤ。さすがお金持ちだ。

いつもは手に付けていられないだろうけど、素直にとても嬉しい。

これで婚約者だ。

「一生愛する事を誓う。結婚してほしい。」と大和さんは言ってくれた。

私はやっぱり嬉しくて涙が出てしまって、

「はい。」とだけしか返事ができなかったけど、
大和さんは大きく笑顔を見せ、私を深く抱きしめてくれた。

で、直ぐに車の中だ。

大和さんはスーツだけど、私は普段着って感じだ。

一応スカートは履いたけど、お化粧は車の中でしているし、

何しろ大和さんが子どもの話で盛り上がってしまっているので、しょうがない。

まあ、実家に着く頃は夕方だろうし、

店も18時にはお終いだから、丁度いい時間だろうか?
(田舎は商店が閉まるのは早い。)



家に電話して、結婚する事になった。

相手は42歳で男やもめだって一応情報を流しておいた。

母はちょっと黙ってから、

「まあ、年が近くても早く死んでいくこともあるからねえ。」

とため息をついて父の事を言っていたようだ。
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