東の空の金星
軽井沢の白樺の木々の間を抜け、

賑やかな通りから外れた森の始まりの場所に私の実家がある。

平屋で店と繋がる家は長男一家(中学2年生の女子と小学4年生の男子がいる。)と母が住んでいて、
隣の敷地に次男一家(1歳の女児が1人。)が住んでいて、
賑やかに店の隣の家で、毎日夕食を一緒に食べている。

喧嘩も、多いけれど、翌日に持ち越さないというルールがあるので、

まあ、なんとかやっている。

上の兄は36歳。下の兄は33歳。

大和さんはより随分と年下だ。


車が停まると家の中から、長男の嫁(35歳)が出てきて、

「いずみちゃん!元気だった。」と私を抱きしめ、大和さんを見て、

「大きい人ねえ。それにイケメン。42歳には見えないわー。」と率直な意見を述べる。

「ありがとうございます。藤原 大和です。
いずみさんに結婚を承諾していただきました。」

と胸ポケットから名刺を出して、ニッコリ笑顔を見せた。
見たこともない営業スマイル。結構カッコいいぞ。

兄嫁は頬を赤くし、

「どうぞ。」と先に立って家に入って行く。

「大和さん、営業スマイルすごい。」と囁くと、

「大人の常識です。これでも、いいオトコで通っています。」と私の耳元で笑った。

…私の知ってる大和さんじゃない。

家ではかなり力を抜いてるってことだ。
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