東の空の金星
私を迎えに来るようになった10日目の朝。

金曜日。

「…オーナー、来週も迎えにくるつもりですか?」

と車に乗り込み、ため息をつくと、

ニッコリ笑顔を作って私の顔を見返してくる。

…きっと、寝不足で疲れているはずだ。



手のかかるオトナだ。


「…わかりました。店に引っ越します。」とさらに大きなため息を吐いて言うと、

「俺の勝ちだな。」と嬉しそうに大きく微笑んだ。



「横暴、過保護、コドモ。」と私が前をにらんだまま言うと、

「なんとでも言え。」と言ったので、

「パンを食べすぎてデブになれ。」

と悪態をつくと、楽しそうに大声で笑いながら車を発進させた。
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