東の空の金星
オーナーは大人なので、仕事が早い。

その日のうちに、私の賃貸の部屋の契約を解除する手続きを整え、
私は不動産屋さんに行って書類にハンコをおした。
契約の部分でお金がかかるところはもう、支払いが済んでいた。
(1ヶ月も経たずに契約解除をすれば違約金も出るよ。)

日曜日には引越し屋が迎えにくることになっていて、

セミダブルの高級なベッドとベッドとサイドテーブル。
上品なフロアランプや書き物机に大きなテレビなんかがすでに部屋に用意されていた。
(ホテルの部屋のようだ。)

「家具、家電付き。必要なものがあったら言え。」とオーナーは微笑む。

気に入らない。

オーナーの思い通りになっている気がする。



「オーナーって、勝手な男なんですね。」

と憤慨した口調で、遥香さんに訴えると、

「まあまあ。
ここに住んでしまえば、後はあんまり干渉してこないわよ。
そう、口うるさいタイプじゃなかったはずだから…
通勤時の心配をしたくなかっただけよ。
シマちゃんが可愛いから。」とニコニコする。

「その可愛いって、
ペットとか、子どもとかに使う可愛いってヤツですよね。」と怒って聞くと、

「怒らない、怒らない。
可愛いのが台無しじゃん。」とマスターも笑う。

「だから、その可愛いって褒めてませんから!」と怒ると、

「しょうがないでしょ。16も年下なんだから。」

わかってますよー


遥香さんは39歳で私とは13歳差。

マスターも38歳で、12歳差。

ここの誰もが、私よりずううっとオトナだっていう事は

私にだってわかっているのだ。
< 42 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop