てるてる坊主にコロサレタ
わたしは悲鳴もあげれずに家の中に逃げ込んだけれど、そいつは玄関を通り抜けて、そして右手を伸ばしながらわたしを捕まえようとしてきた。

お父さんは仕事でまだ帰っていなくて。

窓から家を抜け出して、助けてほしくてお父さんがいる工事現場まで走ったけれど。

行き違いになったのか、事務所の灯りは消えていて誰もいなかった。

あの時の絶望感は言葉にはできない。


『お父さんっ! お父さん助けてっ! 』


って叫んでも乱れた呼吸で声にはならないし、やっと出た声も雨の音に消えていった。

けれど足音だけははっきりと追いかけてくる。
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