てるてる坊主にコロサレタ
「立ち止まって泣くことも息を整えることもできないの。わたしがどれだけ怖かったか分かる? でももっと怖くて苦しかったのはね、信頼していた実宇子ちゃんがわたしを裏切っていたこと」


実宇子は両耳を塞いでいる。

そんなことをしても聞こえているのだろうけれど。


わたしは机の中を探ってペンケースを出した。


「これからね、その恐怖を味あわせてあげる」


そしてボールペンを取り出すと、てるてる坊主に顔を書き始めた。


「……美晴、何をしているの? 」

「顔を描いているだけだよ。……これ、だーれだ? 」


怯えた目をしている奈穂実に、書いたばかりの顔を自慢気に見せた。
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